大切な人が大切な物を手放した。
夢は人を輝かせる。
でも、夢を手放した時、その人が一番、愛しく美しく見えたりすることを、私はよく知っている。
夢を追い掛けることは、形の見えないものに必死でしがみついている姿であると思う。
「若さ」は私達を常に脅かしていた。
何者になりたいのか。
どう生きるべきなのか。
焦りと、期待と、不安に急かされて、がむしゃらに何か、、、
自分だけの何かを見つけ出さなければならない気がしていた。
普通では無いことにこだわり、他とは違う自分に安心するには、夢はとても便利な物だった。
夢を追いかける人間を演じる事は簡単ではないけれど、肩書きの見つからない自分に焦る必要はなくなる。
そうしてふと気が付いた時、演技が演技でなくなり、作りつづける喜びや他では感じる事のできないほどの興奮を、からだいっぱいに感じる。
この気持ちこそが真実で、形の見えなかったはずの自分の夢が、今、この手元にあるようにさえ思えてくる。
ただ、それはわずか一瞬の出来事で、それ以外のほとんどが空想だ。
夢は便利だったはずなのに、本当はややこしく、なかなか手放す事はできない。
私は現実を生きてきて、空想とともに手の中にまだ夢を握っている。
0コメント